【理系高校生必見】工学部・化学系で本当に良いのかね?

大学進学にあたり、理系高校生の中には漠然と工学部に進学しようかなと考えている人も多いだろう。また、既に工学部に所属しているが、研究室(ラボ)のことはあまり考えていない大学1~3年生もいるかもしれない。だが、勉強や研究室も含めた生活まできちんと想定しておかないと、「大学生活こんなはずじゃなかった」となりかねない。私は国立大学工学部の化学系の学科・専攻で博士課程まで過ごした身であるため、工学部化学系を中心に独断と偏見を交えてどのような生活となるのかを紹介していきたい。是非とも工学部進学、あるいはラボ選択の参考にしていただきたい。

なお、以下に示すのはあくまでも一例であり、知人友人から聞いたことを元にしている部分もあるため参考程度にとどめていただきたい。自身の進路を決めるにあたっては必ず自分で調べて判断してほしい。

工学部・化学系の生活はこんな感じ

工学部の4年間は時期に差はあれど勉強が忙しい。特に4年生では研究室(ラボ)に配属され、忙しくなる場合が多い。また、大体は修士2年までいることになる。

ラボについては、工学部化学系学科・専攻に限っていえば、

工学部のそのほかの専攻については、電気電子系・情報系や機械系、物理工学系の一部では出席義務がないなど負担少なめなラボもある。建築系はヤバイ。

以降、大学入学後の時系列順に、生活がどのように変わっていくか概要を述べる。基本的に私の実体験に基づいて化学系をベースに話を進め、補足で他専攻に関しても書いていく。以下のリストの項目をクリックすると該当箇所に飛べる。

・学部3年生まで

まず学部1~3年生までについて。1~2年生では比較的余裕があり、2~3年生で勉強と実験がのしかかってくる場合が多い。私のいた化学系の専攻では1~2年生の必修科目に余裕があるので空きコマや平日0コマを作ることができ、遊んでくださいと言わんばかりの余裕であった。一方で3年生では学生実験が必修となり、週2~3で午後が潰れる。さらに実験にはレポート作成が伴うので、土日に勉強してパソコンをたたくときもあった。とはいえ、私の場合は部活やアルバイトをする余裕はあった。これは大学や学科・専攻によって異なると思うのであしからず。

他学科はどうなのか。機械工学科に在籍した部活動の同期は、3年生の時に勉強が大変すぎて心身に不調をきたしていた。味覚が消えたらしい。一方で建築学科の先輩はエスキスという課題(恐らく製図)に日夜支配され、部活動に来れないほどであった。これとは対照的に、物理工学科の人は大抵楽しそうだった。何笑てんねん。

一部の人は3年生の頃から就職活動(就活)を始めるが、かなり少数派である。工学部のみならず理系学生の大半は漠然と院進するものと考えているため、周りを見ていても就活しようという雰囲気にはならないことが多いと思う。ここは後悔のないように進路を選択すべきところだが、この雰囲気と昨今の就活の早期化によって、「別に研究やりたくないなと思った頃には、就活を始めるのに遅すぎる時期になっていた」ということが頻発する。もっとタチが悪いのは、4年生で研究室に配属されてから研究が嫌だということに気づいても、時既に遅しということ(大手企業など俗に言う”いいところ”は4年生の4~5月までに大半の本選考が終了する)。サイエンスにあまり興味が無いなと早めに悟った人は、理系学部卒で就職していった先輩や、同時期に就活を始める文系の同期・友人などを捕まえて、就活について聞いておくのが良い。

・学部4年生

4年生になると研究室(ラボ)に配属される。ここで大事なことだが、ラボによってその後の大変さはかなり変わる。ラボの優先配属制度を活かすために3年までの勉強を頑張って良い成績を取っておくなど、対策を練っておくことを推奨する。研究自体に強い興味があるなら研究内容でラボを選んでも良いが、内容は何でもいいやと思うならラボの拘束時間、教員の評判、先輩の雰囲気をよく調べておくことをおすすめする。なるだけストレスのないように過ごすのが一番だし、生活のためにアルバイトをしなければならない人もいるはずだ。有機系、生物系ラボでは月~土で出勤(!?)せねばならず、アルバイトで生活を維持するのが非常に難しい場合もある。せめて助け合い、支え合える友人と同じラボを選ぶと、その後が幾分かやりやすくなるだろう。

理系では学部4年生を卒業後、大学院の修士課程に進学する人がほとんどである。ただ、修士課程に進学するためには夏の大学院入学試験(院試)をパスする必要があり、めっちゃ勉強する羽目になる。この院試はラボを変更するチャンスでもあるため、ほぼ全員が本気で勉強してくる。外部生の受験もあるため、運が悪いとドロップアウトの可能性も…(そうそう聞かないが)。

4年生の終わりには卒業論文提出・卒論発表があり、これが第一の鬼門となるだろう。これまでに行ってきた実験と考察をまとめて論文として提出し、スライド資料を作成して教員達の前で発表する。このような経験はほとんどの人は初めてだ(ゼミ内での発表会とはまた違う)と思うので、ハードに感じると思う。期限ギリギリになって数日徹夜で書く人も稀にいる。何より指導教員に詰められるのが苦しい。この辺はどの学科・専攻でも似たようなものだと思われる。

大学院修士課程

修士1年になったばかりのタイミングで、就職活動(就活)の準備をし始める人が現れる。最近は特に就活の始まりが早く、また早く動くとアドバンテージが得られる企業があったりもするので、研究と就活の両立を強いられる人が多い。あるいは、ラボが忙しすぎて就活が全くできない人も…。

学部4年生の時と同様に研究を進め、修士2年になるとより高度にまとまった論文を修士論文として提出、修論発表を経て卒業となる。卒論がさらに厳しくなったものと考えてもらって差し支えない。

化学系且つ実験系のラボは軒並み大変だと思う。というか実験系のラボは合成などの実験と特性評価、考察などを全て手を動かしてやる必要があり、研究論文として提出するには数多くの実験が必須となるので必然的に大変になる。中でも有機系、生物系は実験に時間がかかる場合が多く、拘束時間が長くなりやすいというからくりである。分析系、システム工学系はこの合成の部分が無いか少ないため、比較的楽になりやすい。一方で計算系のラボはパソコンに長時間計算させ、その間は特にやることがないというケースがあるらしく、週3もラボに来ないという友人もいた。ただ、プログラミングを実際にやるタイプのラボ(コード書いたり)はハードらしい。その辺は詳しくないため曖昧な書き方になって申し訳ない。

有機系、生物系が大変そうな雰囲気で書いたが、実際彼らに大変かどうか聞いてみると、思ったほどの負担ではないと意外な回答をする人がいる。確かに実験・分析の時間が長いのでラボ、あるいは大学に長時間いなければいけないが、待ち時間に休憩ができるし、みんなずっと一緒にいるせいで仲良くなってしまってラボの居心地が良くなり、居残りを苦に思わなくなるらしい。慣れちゃってるんだね。人付き合いが好きな人にとっては意外と楽しい部分もあるようだ。一方で無機系は合成も解析もコンパクトにやって定時で帰るみたいな人が多い印象。よく言えば自分の時間を確保しやすい、悪く言えば雰囲気は少し冷たいかも(ラボにも依るとは思うが)。分析化学系、化学工学系は普段はラボにおらず、何らかの発表前に顔を出しに来て少し作業する程度(ド偏見)。実際は見えないところでもっと何かしらやっているだろうが、なんか大変そうな顔もしていないしなんとも。

大学院博士課程

修士卒で就職せず進学する人は珍しい部類である。そんな選ばれし変人は博士課程に在籍し、よりディープな研究の世界へとのめり込んでいく。研究職で一人前になるには博士号は必須である。詳しくは別記事を参照のこと(https://freedoctorlife.blog/advancingtodoctoralcource/)。

ここまでつらつらと書いてきたが、実際どんなものなのかは数字で示さなければよくわからないと思うので、私の場合を一例として載せておく。ちなみに私のラボは無機系で比較的楽(というかまとも)な方であった。

~私の過ごした一週間~

学部1~2年生:週10~15コマ程度、週4の部活動と週4のアルバイト(!?)

学部3年生:週15~20コマ程度、部活動とアルバイトは継続

学部4年生:月~金の9:00~17:00がコアタイム(ラボにいなければいけない時間)、部活動は引退、アルバイトは週4で継続 / 卒論シーズン(発表前1ヶ月間)はバイトほぼ無し、コアタイム外・土日も作業

修士課程:月~金の9:00~17:00がコアタイム、アルバイトはラボの忙しさに合わせて週2~4に調整 / 修論シーズンはバイトを減らし、コアタイム外・土日も作業

博士課程:月~金の9:00~17:00がコアタイム(実際にいる時間は一日10~12時間ほど)、バイト無し / 毎日が修論シーズン。

なお、どの学科・専攻でも卒論、修論はほぼ必ずあり、楽なラボといってもその時期は大変である。文系だって楽じゃないとき(就活とか)もあるので、大学生はそんなものなのだと思っておいてほしい。

まとめ・補足

工学部化学系学科・専攻は比較的忙しくなりやすい(特にラボ)。これは同じ工学部内の物理工、機械工、電気電子情報工学科などと比較しても拘束時間が長いことが多い。但し、建築学科は学部3年生までがかなり忙しいらしい。

化学系学科・専攻の中でも、有機・生物系、無機系、分析系・化学工学系の順に大変なイメージ。

工学部で良いのかね?というタイトルにしたが、農学部は生物系、薬学部は有機と生物の両方、理学部は工学部のやってることが理論寄りになったようなイメージで、正直大差は無いと思われる。理系はどこも大変なのだ。

以上、学部・学科・専攻選びなどの参考になれば幸いである。繰り返すが、上記は私の独断と偏見を交えており、必ずしも当てはまるわけではない点にはご留意を。