アルバイトは、社会の構造を一部知ることができる場である。社会に生かされている普段とは異なり、社会を作り支える側に立つことで、自分がこれまで見てきた景色の裏側を知り、当たり前が人の努力で成り立っていることを知ることができるという点で、大学生で経験しておくべきものの一つであると私は考えている。こんな堅い話もあるが、実際のところ単純にいろんな仕事の裏側をのぞくのは結構楽しいものである。そこで、私のアルバイト体験談を皆さんに共有しつつ、他のアルバイトについても軽くまとめてみた。バイト選びの一助になればと思う。
私が実際経験したアルバイト:
そのほか、私がやってみたかったアルバイトなど:
それぞれのリスト内項目から該当箇所に飛べる。やってみたかったアルバイトは2ページ目へ。
・飲食店(ホール・キッチン)
飲食店はアルバイト先候補として真っ先に挙がるであろう職場の一つ。飲食店バイトの良いところは、①募集が多くとっつきやすい、②まかない飯が食べられる、③飲食店の大変さを知ることができる、といったところが挙げられる。飲食店員は普段目にしていて仕事内容を理解しやすいので初めてのアルバイトにはちょうど良いし、一人暮らしの人ならまかないを食べさせてくれる、あるいは割引価格でご飯を食べられるのはかなりのメリットである。そして、飲食店の大変さを知ると、他人に優しくなれる。これはマジ。外食先で店員に横柄な態度を取る男はやめておけとよく言われるが、この言葉の意味を真に理解できる。
一方で時給は控えめのところが多い。コスパ・タイパ重視の人にとっては少し気が引けるかも。個人的には、ずっと続ける必要はないが経験しておくべき職種であるとは思う。
飲食店といっても様々だが、傾向としてはコース料理を出すような価格帯の高いレストランほど仕事が忙しくない。予約のお客さんが多く、料理の準備をしておけるので急ぐ場面が少ない。但し客層がお金持ちなのでミスが許されない場合も多い。丁寧な仕事が得意なら、ちょっとした高級店がいい。また、まかないでちょっと贅沢なご飯を食べられるのもメリット。普段なら来ることのない“上の世界”を覗くことができる。具体的にはイタリアン・フレンチ、懐石料理のお店など。
一方で価格帯の低いお店は回転数でお金を稼ぐので忙しくなりがち。ただ、忙しいといっても慣れれば意外とやれてしまううえ、次々とやってくるお客様方を捌くことに快感を覚える人もいるようだ。素早い仕事が得意なら大衆向けのお店が良いかもしれない。具体的にはファストフード店、中華料理店、居酒屋、カフェなど。
私は在学中に二つの飲食店でアルバイトをし、ホール(注文を取ったり料理を運んだりする人)とキッチン(厨房内で皿洗いや調理補佐をする人)の両方を経験した。詳細は以下。
一つ目は一家経営の中華料理店。1~3年生の部活動真っ盛りで時間に余裕がない時期だったため、アクセスしやすい家の近くのお店にした。時給は1000円弱、勤務時間は夜なら18:00~21:30程度、昼夜入る場合は10:00~14:30と17:00~21:00程度。夜は早めに上がれるので、課題をやる時間と睡眠時間を確保できた。お店自体は価格帯やや高めで店内は少し上品な雰囲気だったが、働く側にまわってみるとうってかわって漢の職場といった感じ。仕事が遅いと怒鳴られることもあったものの、体育会系のノリでそこそこ楽しく過ごせた。社員さんの仕事のクオリティが高く、それをバイトにも容赦なく要求してきたので結構ハードだった。ホールの店長からは縦社会での立ち回り方、報連相、愛想の大切さなどをたたき込まれ、キッチンでは速く無駄なく正確に作業しろと無理難題をたたきつけられていた。おかげでバケモンみたいなお客さんにも愛想良くできるようになったし、皿洗いがめちゃくちゃ速くなった。一番良かったのはまかない飯で、私が部活動に所属していることを案じて(?)激ウマ料理を一日200円程度で大量に食わせてくれた。毎回2~3人前くらい作ってくれていた。
一般的には、いわゆる個人経営の飲食店はアットホームというか、良くも悪くも社員さんとの距離が近くなる。一方で全てがオーナー(店長)の一存で決定されるため、オーナーと話せばいろいろ融通の利く職場であるともいえる(私のケースでは大量のまかないがこれに当たる。いっぱい食べるっしょ?と聞かれるので、はいお願いしますと毎回答えていたら、最後には何も聞かれず3人前出てきていた。でもまかない代は変わらない)。俺の店だから、と好き放題やる一方で強いこだわりを貫く人も多いし、経営に携わっているのでお金周りに細かく厳しい人もおり当たり外れがあるが、結構居心地の良いお店も存在している。
二つ目はバックに大きめの企業がついているイタリアン(但しチェーンではない)。4年生になり部活動を引退したので夜遅くまで働きたいというのに加え、キラキラしたところで働いてみたいと考え、駅チカのビル内にあるやや価格帯の高いイタリアンを選んだ。時給は1200円、勤務時間は夜のみで18:00~22:30程度、昼夜入る場合は10:00~15:00と17:00~22:30程度。時給が高いうえ勤務時間長めでおいしい条件。シンプルに仕事の難易度が高いので、キッチンのアルバイトには調理師学校・製菓学校の学生が採用されていたが、なぜか一般大学生の私もキッチンに入れられた。イタリアンのキッチンでは中華とは違って速さよりも丁寧な仕事が求められ、さらに盛り付けの美的センスまで要求された。ハードル高すぎるだろ。しかし、めちゃくちゃ優しくて教えるのが上手なパートの方が懇切丁寧に指導してくれて、苦しむことなく仕事に打ち込むことができた。そしてまかないが大変美味い。飲食店はどこもそうなのか、私が大食いと聞くと容赦なく大量のご飯を出してくれた。それだけでなく、バイトがお客さんに料理の味の説明をできるように、提供前に事前に試食させてもらえる。ドルチェ(デザート)の余りをくれるし、仕事終わりに余ったワインやご褒美エスプレッソを飲ませてくれたりする。完全に餌付けされていた。
一方ホールはというと、お客様の前では落ち着いた所作を求められ、テーブルの掃除や食器類のセット、飲み物・料理のサーブの他、お客様の食事の進み具合を見てキッチンに次の料理の合図をしたり、お皿を下げにいったり、飲み物を勧めに行ったり、提供時に料理の説明をしたりといった仕事。急いだり焦ったりは少ないが、かなりの気遣いを要求される。服装はワイシャツ・黒ベストと黒スラックスにスタイリッシュなエプロンとかっこいい。私ホール志望だったのに。
チェーンではないがとある企業傘下の飲食店ということで、社員さんたちは個人店ほど自我を出していないので雰囲気は全体的にややゆるめだったかもしれない。だが雇われのシェフは個人的に客がつくほどの有名人らしく、会社の融通の利かなさへの諦めと料理へのプライドが入り交じって優しかったり厳しかったりしていた。
私は働いたことがないが、チェーン店はマニュアルが決まっていて、基本その通りにやるだけらしい。店長のモチベはガチ料理人と比較すれば低く、私の周りに限っては厳しいという話はそこまで聞かなかった。そこそこの熱量でちょうど良く働けるのかも。
正直こんなに細かく書けるのは一番長く働いた飲食店だけである。以降は軽めに紹介。
・レンタカー店員
意外と穴場と思われる、レンタカー屋の店員。運転免許(AT車限定でも可)が必要なため時給が高い傾向にありお得である。大手なら免許取得後1年の制限がある場合も。仕事内容としては事務的な受付業務、車の清掃、配車、点検など。私のいたところでは、整備関連はさすがに社員さんがメインでやっていた。
私は半年程度しか働いていないのであまり多くの仕事ができなかったが、車の運転自体が楽しいので働くのが苦でないうえ、個人的には運転技術を磨くのに重宝した。少し離れたところに借りている駐車場まで車で移動したり、立体駐車場から車を出し入れする程度だが、これのおかげで駐車に困らなくなった。普段車の運転をしない私でもなんとかなったので、ペーパードライバーだけど脱却したいという人に結構おすすめ。
・某国民的アパレル店員
アパレル(服屋さん)バイトのメリットは、流行りのファッションに関する知識を得られること、服好きの人と出会えること、店によっては社員割引(社割)で安く服を買えること。時給は1000円程度で可もなく不可もなく。業務内容は接客、レジ、品出し、在庫の整理、清掃など。立ち仕事なのがやや辛いところではあるが、飲食店ほどではない。
私が働いていた某有名アパレル店(UNIQL○)では社員割引により30%オフで服を買えた(当時)。時給は1000円スタートで定期的に昇給のチャンスあり。勤務時間は7:30~20:00の中で好きな時間をシフト申請していた。会社のイメージに違わず、社員さん・バイトの方々は真面目な人が多かったので、人によってはとても働きやすい環境だと思う。
また、勤務時間帯が昼と夜に限定されやすい飲食店とは異なり、営業時間内であれば中途半端な時間でも働くことができるのもメリット。私は朝昼の空きコマで働けるという理由でここを選び、仕事終わりにそのまま大学へ直行していた。これはアパレルに限ったメリットではないが、結構大事なポイント。
ちなみに、ちょい高めのアパレルブランドのお店や小洒落たセレクトショップにはビビってしまって、私は働こうと思えなかった。某国民的アパレル店でのバイトは、ファッションの面での恩恵はこれらのアパレル店に劣るかもしれない(おしゃれさやブランド品に触れられるかなど)が、大企業での仕事を知ることができたのは大きな収穫だったと思う。マニュアルや管理が徹底されていて、組織運営の一端を見ることができとても興味深かった。起業に興味がある人はもしかしたら参考になる点があるかもしれないので、大企業、チェーン店バイトはおすすめ。
・カラオケ店員
アパレルと同様、飲食店で働けない時間でお金を稼ぐべく応募。特に深夜勤務は手当が出るため、結構おいしい。仕事内容は受付と部屋の清掃など。楽そうだからという不純な動機で選んだが、いざ働いてみるとそうでもなかった。私と同じようにバイトが全員楽したがるので、新入りに仕事を押しつけて自分はサボる。それはまだ良いにしても、私が働いていた店舗は食品など持ち込み可能であったため、大学生が酒を持ち込んで好き放題暴れたあと吐いて掃除せずに帰る、なんてことがちょくちょくあった。もちろん新入りの私が掃除させられた。あまりにひどいので最大のメリットであった深夜勤務を泣く泣く避けたし、そのうち先輩達が嫌になったのですぐやめた。職場ガチャ失敗というやつである。
・派遣バイト
身内に勧められ派遣会社に登録していたので、面白そうな案件があればたまの休みに丸一日使って稼いでいた。給料(時給だったり日当だったり)、勤務時間、場所は案件毎に異なる。案件は丸一日かかるイベント系が多く、結婚式場のスタッフやライブイベントのスタッフなど様々な募集があった。部活動をやっていた私ではあまり働けなかったが、とある飲料の新製品のサンプリングを手伝ったことがある(ちなみにかなりレア)。やることは街ゆく人たちに飲料サンプルを無料で配布するだけ。初夏の時期だったこともありみんなサンプルを受け取ってくれたので、勤務想定時間の半分ほどの時間でノルマ達成した。時給にして2000円弱とほくほくだった。変わったバイトを探すのには良いかも。
・Uber配達員
Uber配達員は、厳密にはアルバイトではなく自営業に分類される。額に差はあれどある程度時間を気にせずにお金を稼げる点、自分が頑張りさえすれば稼ぎを増やせる点がメリット。院生のとき、実験の都合で帰宅時間が読めない日が増えたため、Uberでのお金稼ぎは非常に重宝した。どれくらい稼げるかというと、時給換算では、日によるが春秋は1000円程度、雨の日や夏冬で1500~2000円程度。特に夏冬のピーク時(昼・夜ご飯の時間帯)はとんでもなく稼げた。私が働いていた当時は需要の増える夏冬、ピーク時、雨の日にクエスト(本日中に○件配達で追加報酬、みたいなもの)が発生し、これをクリアすると配達報酬に追加で報酬上乗せというシステムだったので、ゲーム脳の人にとってはたまらなく頑張れると思う。私はクロスバイクで配達していたが、原付でも全然良い(ガソリン代は経費で落とせる)。音楽を聴き口ずさみながら自転車を漕いで配達していたので、私の中では仕事というか普通にストレス発散の位置づけになっていた。
余談だが、自営業として扱われるために一定額(年間所得で副業なら20万、専業なら48万円)以上稼ぐと確定申告が必要となるのが少し面倒。しかし、それと同時にお金の勉強のきっかけにもなったので、結局プラスの側面が大きかった。
ただし、これは少し前の需要があった時期の話なので、低迷しつつある現在やこれからは稼げるかどうかは微妙である。他のデリバリー系の仕事はかなり減ってきているうえ、Uberのよさである、やればやるほど儲かる側面がそこまで強くないので、無理してやるほどではないのかもしれない。