- 第一印象で面白そう&頑張れば実現できそうと思ってもらえる研究計画を考える
- とにかくわかりやすく書く
- 申請者(自分)が優秀で、研究遂行可能な人物であることを最大限アピールする
- いろんな人に作成した申請書を読んでもらい、フィードバックをもらう
- 何度も修正し、最善の申請書を目指す
*項目1~2は1ページ目に記載。
続きの項目3.から。
3.筆者(自分)が優秀で、研究遂行可能な人物であることを最大限アピール
これも研究計画と並んで重要な事項である。自分が有能であることを示す上で最もわかりやすいのが「実績」である。論文執筆や学会発表が多ければ、それだけ研究が進められる人物および環境であると受け取られる。実績がない場合も、研究計画内容そのものの完成度や「研究遂行能力の自己分析」、「目指す研究者像」などの部分でアピールが可能であるが、特に「研究遂行能力の自己分析」ではアピールの根拠として実績を示すことが通例なので、やはり最低限の実績はほしいところ。 研究が上手くいくかは研究者自身および所属研究室など環境に大きく左右されることは審査員の先生方もよく知っているはずなので、これらが伝わるように書くと良い。研究費は研究者への投資なので、将来有望な人物が採択されやすいのは当然である。自分をできるだけ魅力的に見せるような書き方が良いだろう。
なお、博士課程に進学することを早めに教授に伝えておけば、今後のために実績を積ませてくれるラボもあるとかないとか。私の所属ラボの教授は、学生を積極的に学会へ参加させていたため、偶然ではあるが私にも最低限の実績があり、助かった(本来であれば、国際誌への論文投稿が一つ以上あるのが心強い)。
ちなみに私はM1で就職活動を経験しており、それなりにESや面接対策を行っていたので、自己分析や目指す研究者像の欄は就活で得た知識もフルに活用してできるだけすごい人物に見えるように書いた(嘘は書いてない。嘘はダメ、絶対)。就活の知識も意外と活きる部分があったのかもしれないので、余力があればぜひ調べて参考にしてみてほしい。
4.いろんな人に作成した申請書を読んでもらい、フィードバックをもらう
これは私がやって非常に良かったと思うことである。ラボの教員の方々に見てもらうのは当然として、私はさらに他の研究室のDC1に採択された先輩、就活を終えて大手企業に内定した同期の友人ら、果ては地元の友人(ド文系社会人)にも見せて、どんな内容か理解できたか、読みにくい点はなかったか聞いてまわった。大事なのは、彼らが私の専門分野に明るくなかったことである。そんな人でも読めてどんな研究なのかわかるなら、審査員の先生にとっても読み始めのハードルは下がるし、内容をわかってもらえるだろうと期待した。また、研究分野の異なる人からは分野による用語のイメージの違いや背景知識の有無、就活経験者・社会人からは日本語の読みやすさ、特に後半の自己分析と目指す研究者像のところで有益なフィードバックをもらえた。私の友人らに関しては、大手企業に通るくらいなのでそれなりに良いESを書いていたはずで、指摘や助言が意外とバカにならない。また、頭の良い人に聞けば頭の良い回答が返ってくるので、恥を捨てて聞くのが良いと思う。
5.何度も修正し、最善の申請書を目指す
上記の方法で書いては見せ、フィードバックをもらって書き直し…を繰り返すと、嫌でも申請書の完成度は上がっていく。そして大事なのは、もう十分では?と思っても読み返して修正をやめないことである。毎日時間を取って自分の申請書草稿を眺めていると取りこぼしや新たな視点・発想が見えてくる(実話)ので、〆切ギリギリまで修正し続けることをおすすめする(提出期限はもちろん厳守)。ちなみに私は4月の頭から書き始めて6月の頭に提出するまでに14回書き直したが、これでも少ない方らしい。
余談だが、毎年5~6月は科研費などの申請期限が集中しており教員の皆様も忙しくしている可能性がある。ゴールデンウィークに丁寧な添削が受けられると思ったら先生は全然暇じゃなくて頼めなかった、なんてことがあり得るので、早いうちからこまめに少しずつ、特に終盤はマイナーチェンジの確認をしてもらう感じで見てもらう方が無難である。
まとめ、補足
以上、学振DC1の申請書を書く上で私が実際に気をつけた点を5点に絞って書いた。これらを意識すれば相当良い申請書が書けるとは思うが、それでも採択には運が絡む。あくまで通りやすくするためと割り切って、それでも手を抜かずにやりきってほしい。採択されれば万歳、されなくても今後の研究生活で大いに活きるはずである。
それでは、皆さんの学振 特別研究員採択への挑戦が良きものとなるよう。
補足1:冒頭で「私は運が良かった」と述べているが、それは以下の点による。
・コロナ禍で外出が自粛された時期と近かったためか、審査において実績の比重が軽かったようである。私は3つほど学会発表を行ってはいたものの論文投稿は一切なかったので、本来ならディスアドバンテージであったところがノーカウントになっていると思われる。
・私の書いた研究内容は共同研究先との研究内容を発展させたものである。つまり、下地がある状態で書き始めたので、2ヶ月という比較的短い期間で申請書を書き上げることができた。何なら博士課程進学を決めたのが申請書書き始めと同時期である。面白い研究計画なんてまだ思いつかないし申請書なんて書いたことないよ、という人が2ヶ月で書くのはかなり追い込まないと難しいと思うので、もっと早くからでも手を付けて、先輩や先生に何度も見てもらうことを心がけた方が良いと思われる。
・教員が学振 特別研究員や科研費に何度か採択されたことのある人たちで、申請書作成に長けていた。参考にした本を教えてくれたのも、いろんな人の申請書草稿を参考として見せてくれたのも、フィードバックを何度も引き受けてくれたのも先生方である。私のケースだけでなく、他のラボでは博士学生の先輩がDC1に通っており前例を参考にできるなど、特別研究員への挑戦と成功は環境に左右される部分がある。もしあなたがまだB4で、博士課程進学および学振への挑戦を考えているなら、今のラボは良い環境か確認した方が良いし、そうでないならよりよい環境を求めてラボを移ることを考えても良いかもしれない。但し、何の研究がしたいかを見失っては本末転倒なので、よく考えて。
補足2:私は学振DC1だけでなく、その前に卓越大学院プログラム、大学フェローシップへの申請で申請書を書いており、これらを経てDC1の申請書の完成度を上げていった。「申請書を書く」という経験の有無はかなり大きいので、チャンスがあるならぜひ挑戦してみてほしい。ちなみに私は卓越大学院プログラムに落ちている。こんなんでもしっかり根詰めてやれば学振だって受かるので、自信がなくてもめげずに頑張ってほしい。